眠れなくなった。何をしてもすぐに疲れ、創作に対して曖昧な態度を取るようになっていった。眠れたとしても2時間で目が覚めて嫌な夢を見た。そのどれもがトラウマに付随するものだった。天井を眺めながらいつのまにかアラームが鳴って、バイトの始業時間が始まったが、体が動かなかった。
近くにあった黒い絵の具で腕全体を真っ黒に染めて街を歩いた。渋谷まで歩いて交差点で人の流れを見た。いろんな人が街を、人生を歩いていく。
きのうコーヒーカップを割った人が、あさって恋に落ちる人を追い抜いて、行動で傷つけた人が、言葉に傷つけられた人を追い抜く。80年と2ヶ月後に死ぬ子供が38年と6ヶ月後に死ぬ母親に背負われて、駅の自販機でちょっと高い飲み物を買って後悔するサラリーマンが、30円の駄菓子を頬張る小学生を追い抜く。パン屋見習いが振り向いたちょうどそのとき、美大生が道に落ちていた綺麗な石をカメラに映す。女子高生3人が爆笑して空を見上げると同時にホームレスが俯き瞼を閉じる。信号が赤に変わって、自分は立ち止まったままこれからのことを考えて、自分の存在を確かめるために電柱を殴る。でも現在の自分から出ている血なのか、過去の自分から出ている血なのか分からなかった。
電柱を殴る。電柱を殴る。電柱を殴る。電柱を殴る。電柱を殴る。電柱を殴る。電柱を殴る。電柱を殴る。電柱を殴る。電柱を殴る。電柱を殴る。電柱を殴る。電柱を殴る。電柱を殴る。電柱を殴る。
[展示情報]
▪会期:2025年1月10日(金) – 1月15日(水)
▪会場:GALLERY33 (B)
▪開館時間:11:00 – 19:00 (初日15時から/最終日17時まで)
▪住所:東京都杉並区高円寺北2-8-5
▪作家プロフィール
kerocchi
1997年西宮生まれ。生活を送る上で生まれる自分で捉えられないモチャモチャした気持ちの悪い感情を主にコラージュと文章の中に再構築し、自分を把握、認識しようとしている。
Instagram @kerocchi22